これは最近あった出来事です。
ブログですから秘匿性は高く、守秘義務には抵触しないと考え、具体的な症例のお話をいたします。
50歳、女性、職業 O L 。
2~3日前から続く膝痛が前日より高度となり来院。
明らかな外傷歴なく、スポーツもしていない。
本人は、思い当たることはないとのこと。
身体所見としては、関節内に明らかな液体貯留なく、熱感も認めない。靭帯の不安定性も認めず。
軽度の圧痛が膝の内側から前面に存在。
医療被曝低減の観点からすぐに M R I 施行としました。
M R I は、磁場を利用する検査機器で情報量が非常に多い反面、特別な状態以外禁忌はなく、体にも全く無害です。
M R I の結果、関節内に液体貯留なく半月板も正常。前十字・後十字靭帯、内外側の側副靭帯も問題認めず。
ただ内側~前面の深部骨膜と筋の間にT2強調画像とSTIR像(脂肪抑制T2強調画像)で高信号域の液体貯留と思われる所見がありました。
病態の可能性として、
① 記憶に残らない程度の軽微な外力で、筋肉や靭帯などが損傷して出血したか
② 壊死性筋膜炎(致死性が高い疾患)などの感染症が突発的に発生したか
或いは全く想定外の病態か。
と頭を抱えてしまいました。
M R I 像は、かなりたくさん拝見していますが、このM R I 像は通常の疾病の所見とは全く違うため、正直に患者さんにその旨お話したところ、患者さんが、「実は、血栓予防薬を飲んでいます。それに掃除が好きで2~3日前もたくさん掃除をしました。」
というお話をしてこられました。
早く言ってよ~~
と思いましたが、私の聞き方も悪かったのだろうと反省し、
「そうであれば、掃除のときに膝をついて内出血した結果のM R I 像と考えれば理屈に合います。」と患者さんにお話できました。
患者さんの病歴(現病歴、既往歴)と身体所見、的確な画像検査が如何に病気の診断に重要であるかということを、再確認した出来事でした。
わたし的には、謎解きのような診療もまた興味深く、「面白い!」とつい口走ってしまいました。
これからも忙しい、暇にかかわらず、基本に立ち返って確実な診療を心がけていこうと、意を新たにいたしました。